河本薫の『最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか』についての要約。大阪ガスでのデータ分析組織の立ち上げから、ただのデータ分析屋に終わらずにビジネスの成功まで繋げるためのエッセンスについてまとめられた書籍です。
ひと言でまとめると
データ分析組織を立ち上げ/成功させて行くために乗り越えるべき壁は、数学やITなどの知識や技術ではなく「人に働きかける壁」であった。その壁は以下の4つである。
- 事業部門と連携する壁
事業部門との連携が成功の絶対条件 - 会社の経営に貢献する壁
会社全体に貢献してこそ評価される - 分析組織のメンバーを育てる壁
メンバーの能力だけでなくマインドも育てる - モチベーションを維持する壁
メンバーのモチベーションを保つ
書籍のエッセンス
データ分析者に必要な3つの力
データ分析は問題を解く手段に過ぎず、「(課題を)見つける力」「解く力」「(現場で)使わせる力」の3つが必要とされています。こちらは前著の『会社を変える分析の力』にて説明されています。
問題を解くだけでは知見は得られても「価値」は生まれない、データ分析で得られた知見をビジネスの現場で役立てられて初めて価値が生まれる。
図
事業部門からの信頼と予算を勝ち取る
高い予測精度やビジュアル的なグラフで「すごい」と思わせることと、実際のビジネスで「役立つ」ことは全く違う。分析報告会ですごいと思えた分析結果が意思決定には役立たないのはなぜか、それは「役立てようとする意図」を持ってデータ分析していないから。
また意思決定に役に立ってもその効果が微々たるものであるなら役立たなかったも同然である。たとえ、KKD(経験/勘/度胸)で業務をこなしていたとしても現状ムダがなければ効果は小さい。
データ分析者がオフィスに閉じこもったままでは業務改革は実現できず、役立つ分析にするには事業部門と連携していく必要がある。
見つけるフェーズ:事業部門の抱える業務課題の中からデータ分析を用いれば改革できそうな課題を見つけ出す必要がある。事業部門が業務課題を示し、データ分析者が課題解決するためのデータの存在や分析方法を提示、事業部門が更に質問や指摘を繰り返し、対象とする業務課題と解決方法が明確になっていく。その可能性が臨界点を超えたときに初めてプロジェクトがスタートする
解くフェーズ:「問題設定やデータ定義に誤りがないか」「事業部門の仮説(経験/勘)の融合」などの観点から連携を進める。
また、実行フェーズを見据えて定期的な情報連携を行っていく。途中経過を何も聞かされずある日突然分析結果だけ見せられても「押し付けられた」感があり、感情的に受け入れにくくなってしまう。
使わせるフェーズ:現場で分析結果を活用してPDCAを回していく。追加のデータ分析やツールへの落とし込み、更にはその操作の研修も実施する。
経営に貢献する
全社でのデータ分析組織になるメリットは、
①全社的に活動と社内で認知されること
②分析組織のリスクヘッジになること
事業環境によってはデータ分析が不要になる場合も。
③仕事のマンネリ化を防げること
経営への貢献度が大きくなるのは「未開拓のエリア」と「大金が動くエリア」
組織横断の業務改革に挑む。各事業部門の業務を一つ一つ学び、その積み重ねで組織横断的な業務を知っていくので業務の詳細を理解しながら俯瞰的にものを見れるようにもなっている。これがデータ分析組織の「特権」になっている。
メンバーの幸福を勝ち取る
成長に個人差はあるが5~10年で「見つける力」「解く力」「使わせる力」のすべてを併せ持つ人材に成長できる。経験上の習得順は「解く力」→「使わせる力」→「見つける力」。
成長できる仕事をアサインし、上記の3つの力を一気通貫でアサインすることを原則としている。
事業部門でできる分析は事業部門に任せる(案件を断る)。事業部門自身のデータ分析力を高めることにもつながる。