カメラ/写真撮影

EOS R6 Mark III ― 商品企画の視点から考察する残念ポイント

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カメラ/写真撮影

2025年11月6日Canonからフルサイズミラーレス機のEOS R6 MarkIIIが発表されました。

カメラ業界の専門家ではないが、サービス開発とマーケティングの経験から、このモデルをどのように位置づけるべきか考察しました。

「EOS R6 Mark III は“優等生”だが、“提案者”ではない」というのが率直な感想です。

Canonの公式のマーケティング資料を読み解く

デジカメウォッチにてキヤノンのメディアレク資料が公開されていましたのでこれらをベースにどのような思想で設計されたのかをトレースしてみたいと思います。

EOSR6の系譜

https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/2061309.html

EOS R6(以降MkIと表記)は2020年に1DX Mk IIIと同じセンサーを採用し、R5の兄弟機として登場しました。R5,R6間でスペックに大きな差はなく、高画素のR5と高感度耐性のR6という位置づけで発売されました。マーケティングのキャッチコピーは「NEW STANDARD フルサイズミラーレスの新標準へ」。当時「RF800mm F11 IS STM」など独創的なレンズの発表と相まって新しい撮影スタイルが提案され、このキャッチコピーは非常に納得感のある提案でした。

EOS R6 Mark II (以降MkII)は2420万画素、最大40コマ/秒の高速連射などR3に迫るスペックとして発売されました。キャッチコピーは「BRAND NEW SIX 世界は新たなる映像表現の可能性と出会う。」MkIIはあまりにも完成度が高く、実質的にミドルクラスの頂点ともいうべき存在でした。

EOS R6 Mark III(以降MkIII)は3250万画素と高解像度化が進む一方、最大ISO感度は64000高感度耐性が低下しています。一方、オープンゲートなど動画性能の向上が図られています。キャッチコピーは「好きの先へ。」。スペックは確かに進化しましたが、スチル性能は横ばい~条件次第では後退し、一貫した思想が見えにくくなっています。

ターゲット

https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/2061309.html

主要な想定ターゲットとして、同クラスからの買い替え層を狙っています(ターゲット①)。これまでのEOSR6、Rはもちろん、3250万画素と高画素化が進んでいるため、レフ機の5DMkIVや6DMkIIからの乗り換えも想定されていることがポイントでしょうか。

また、第二ターゲットとして、下位のフルフレーム機(R8/RP)やAPS-C機からのアップセル層も狙っているようです(ターゲット②)。

今回動画性能を強化していますが、動画関与度の低いユーザーはあまり想定されておらず、静止画関与度の高いユーザーをターゲット解いているにもかかわらず、スチル性能の向上が図られず、動画性能ばかりが向上しており整合性が取れていないように感じます。ターゲット(スチル)とソリューション(動画強化)が噛み合っていないのはマーケティング的にかなり違和感がある。

MkIIIの設計コンセプト ~MkIIの不満解消

https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/2061309.html

MkIIの利用状況アンケートの結果、オートフォーカスへの不満、画素数に対する不満、連写撮影機能(バッファ、対応カード)への不満が課題となっていました。ここはMkIIが40コマ/秒の高速連写という飛びぬけた性能となっていたからこそ、この高速連写を支えるメモリ周りのインフラが追い付かなかったという印象です。

また後段でも述べますが、動画撮影への不満は最も少ない結果となっていることにも注目です。

性能

バッファ機能、プリ連続撮影

https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/2061309.html

アンケートの結果から「バッファ容量を増やす」「転送速度の速いカードに対応する」という何のひねりもない改善がなされています。これらにより不満は解決されたが、何ら新しい価値は生んでいないと言えます。

手振れ補正

https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/2061309.html

最大中央8.5段、周辺7.5段となっています。多くのメディアでは「手振れ補正機能が改善」とされていますが、MkIIが8段となっているため、この結果は改善したのか改悪になったのか評価が難しいところ。

動画性能の向上

https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/2061309.html

オープンゲート記録の実現、動画撮影時のAF制御、記録方式など動画はむしろ本気で強化されています。しかし、その路線で戦いたいのか?“R6”でやるべきか?という疑問が残ります

MarkIIIがなぜ期待外れに感じるのか?

ターゲットとソリューションの不一致

MkIIIの主要ターゲットはスチル撮影者を想定しているにもかかわらず、改善点の多くは動画撮影者向けとなっており、商品開発に一貫性のなさを感じます。

MkIIの利用者の不満点の2位に大きさ重さが挙げられており、スペックアップしたいユーザーが動画を撮りたいと思っているのか?また、動画撮影への不満は最下位でほとんど不満がないものに対してこの想定ターゲットの振り方が曖昧だったのでは?

高感度の弱体化

Mk IIIでは最大ISOが102,400 → 64,000へと低下した。
あわせて、Canon公式の商品紹介ページから高感度での作例を提示しておらず、事実上の敗北宣言といえるのではないか。

※MkIIではISO12800での作例、製品特徴ページではISO102400の作例も提示されているが、MkIIIの作例では最大でISO2500、製品特徴ページにおいては高ISOのサンプル画像すら存在しない。

実際にユーザーが使うのはISO上限は3200〜6400あたりとなるが、それでも明暗差の大きい場面で現像時に暗部を持ち上げる処理を行うことは多々ある。R5に対して画素数の少ないR6シリーズの最大の差別化ポイントが高感度耐性であったはずだが、Canonの商品ラインナップ上も戦略性を感じられない。

消極的な開発思想

R6はNEW STANDARDとして打ち出され、当時2010万画素と解像度では劣るものの、新しい撮影スタイルというのを提唱しました。その一つに、低解像度だが高感度耐性である点を活かした「RF800mm F11 IS STM」など暗いけど安価に超望遠の世界に踏み込めるというものでした。

一方MkIIIは、優秀すぎたMkIIの欠点を補い、α7Vなど競合との数値上のスペック勝負に戻ったように感じます。

特に連写性能が顕著です。競合のSONYのα7Vは10コマ/秒、NikonのZ6IIIが20コマ/秒であることを考えるとMkIIの40コマ/秒はオーバースペック過ぎました。

記事中にも「画素数が増えても連射性能は従来モデルと同等の最大約40コマ/秒を実現するなど、スペックダウンしないように配慮したという。」という記述がなされており、MkIIが出来すぎたが故にMkIIIの開発が足かせになっているように見受けられます。

R6が進むべき方向

「New STANDARD」の再発明。ミドル機であるR6シリーズは、スペック合戦の土俵ではなく、“新しい撮影スタイル”を提案する場であるはずである。

ハード面の方向性

内臓マイク強化による“ライト動画層”への対応。一眼で動画撮影する際に一番ネックになるのが、画質そのものではなく音声の取得にある。本体に内蔵されているマイクは飾りレベルでどのメーカーも着目していない要素である。

最近のアクションカメラは小型の内臓マイクにもかかわらず風切り音の低減など非常に高性能となっている。オープンゲートなど一部の動画ユーザーが満足する仕様を取り入れる前に、気軽に動画撮影できる環境を整えるべきである。

また、スチル撮影での利便性を高める4軸チルト液晶への対応(SONY/ニコンに遅れを取っている)など、競合と劣後している要素についてのキャッチアップが求められる。

ソフト面の方向性

  • 流し撮りやストロボの自動アシストなど「プロの技術を一般化する機能」
    MkIIにて実装されているが、利用者の声はほとんど聞かない。技術レベルの底上げとプロモーションを期待する
  • 白飛び/黒つぶれ警告の強化
  • 三脚使用時の“振動収束後自動シャッター”など実利用に即した改善
  • 音声・ジェスチャー撮影(アクションカメラ的発想)

こうした“体験の新提案”こそ、R6シリーズが持つべき武器だ。

結論:EOS R6 Mark III は“優等生”だが、“提案者”ではない

Mark IIIは間違いなく高性能で、ミドルフルサイズとしての役割は果たしている。
しかし、初代R6が掲げた“New STANDARD”の提案力は弱まり、Mark IIの延長線上で“無難にまとめた”印象が拭えない
Canonがもう一度、“なぜミドル機が存在するのか?”を問い直すことが必要だろう。
競合が撮影体験をアップデートし続ける中、R6シリーズが再び“新しい撮影世界を切り開く存在”となることを期待したい。

結局R6 MarkIIを購入することにしました。

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